特に飲食店でのお給料は現金での手渡しが多いですね。
え、いまどき現金手渡しなの?普通銀行送金じゃないの?
はい。普通の企業であれば圧倒的に銀行送金でのお給料振り込みが多いです。たまに小切手を渡すようなところもありますが、現金をそのまま渡すようなところはまずないです。
ではなぜ一部の飲食店や企業は現金手渡しが多いのか?そもそもそれは法律上どうなのか?
オーストラリアの飲食店での雇用状況と併せて書いていきますね。
1.法律上ではどうなのか
オーストラリア税務局(ATO)のホームページによりますと、現金手渡しでのお給料支給について明記されており、
Your employer may pay your wages to you in cash (or with a cash cheque), rather than into your bank account. Paying wages in cash is legal and may be more convenient.
このように書かれています。つまり、現金でのお給料支給自体はまったく問題ありません。
日本でも昔ながらの習慣に沿って、特に老舗の日本料理店や旅館などでは、数少ないでしょうが現金を直接渡すというお給料支給の方法をとっているところもあるでしょう。
このご時世で銀行振り込みでないのは心配な部分もありますが、オーストラリアでは法律上は現金手渡しは違法ではありませんので、その点はご安心くださいね。
2.現金手渡しの問題点
ではこの方法による問題点は何なのでしょうか。
それについても、ATOのホームページで記載されていますので見ていきましょう。
Some businesses deliberately use cash transactions (for example, pay their employees ‘cash-in-hand’) to avoid meeting their tax and employee responsibilities.
このような記載があります。いくつかの会社では「わざと」現金手渡しの方法をとっているところがあり、その理由は納税をごまかしたり法律上の雇用条件を無視した雇用をしているからだ、と書かれています。
これが実際に起きている大きな問題点です。
特にレストランの一般的なスタッフの仕事(サーバーや食器洗いなど)は人気がなく敬遠されがちで、常に人手不足にさらされています。ワーキングホリデービザ・学生ビザには就労時間・就労期間に制限が設けられており、そのビザのルール通りに雇用したのでは頻繁に求人を出さなければならなくなり、新人スタッフのトレーニング期間も考えると、最大半年までの雇用、もしくは2週間で48時間までの労働時間では、とてもお店を回すことは難しいのです。
もちろんフルタイムで働ける人が入ってくれれば万々歳ですが、そのような人はなかなかレストランへバイトに行くことはないですよね。
また、ワーホリや学生ビザの人も、時間はあるのにもっと働きたいという方もいらっしゃるでしょう。
なのでお金のやりとりの記録が残らない現金手渡しをしているところが圧倒的に多いのです。
もちろんきちんと給与明細が発行され、お給料からは所得税が差し引かれ、さらに雇用主がきちんとスーパーアニュエーション口座へは年金を入金していればまったく問題はありません。
しかしながら、上記のような少しルールから逸脱した雇用をしているため、現金手渡しのところは、ただお金だけを渡し、給与明細などは発行しないところが非常に多いです。
この方法をとることにより、お店側としては法律上で定められた最低賃金以下で人を雇い、またスーパーアニュエーションも払う必要がないため、人件費も大幅に削減できるというわけです。
3.現金でお給料をもらってしまったら
合法な手段で貫きたい意思があるのであれば、以下について確認しましょう。
これもATOホームページで紹介されていることですので、抜粋しますね。
Your rights and responsibilities(あなたの権利と責任)
If you are being paid cash, you:
- must declare the cash as income when you lodge your tax return
- should still receive a pay slip showing all your earnings and the amount of tax taken out
- should receive a payment summary at the end of the year setting out your full earnings for the year and the amount of tax deducted
- should check that your employer is making super contributions on your behalf.
もし現金でお給料が支払われた場合についての注意事項が書かれています。ポイントとしては、
- 現金支給でもきちんと確定申告(タックスリターン)をすること
- 必ず差し引かれている税金の詳細が明記された給与明細を受け取ること
- 会計年度末に正式な源泉徴収書を受け取ること
- 雇用主にきちんとスーパーアニュエーションが支払われているかどうか確認すること
スーパーアニュエーションは必ず専用の口座をつくり、雇用主がそこへ数か月に1回の支払いが必要になります。スーパーアニュエーションに関しては、現金手渡しは不可能かと思われます。
4.実際他の人はどうしているのか
おそらく、ATOの職員もこのようなお店がめちゃくちゃたくさんオーストラリアに存在していることは知っているでしょう。でもそれらすべてのお店を摘発しようとしたら、いったいどれだけの時間と人員を費やせばよいのか、見当もつかないほどでしょう。
なので基本的には誰かがチクらなければ、バレないままというのが現状です。
(今後どうなるのかはわかりませんが・・・)
たぶんATOもタレコミがない限りは調査に乗り出すことはあまりないと思います。
お店側としてもこれは都合がよいですし、実際に働いている人もよりたくさんシフトに入れるし差し引かれる税金がないので、場合によっては正規の方法よりもお金が稼げます。
したがってお互いがそんな事情を理解した上で働いている人がほとんどです。
今後長期滞在する予定のない方はこれでもよいかもしれませんが(もちろんホントはよくないですよ)、もしこれから別のビザを申請するようなことになった場合、過去の職歴や銀行の残高証明を提出する際に、このように過去に働いていたことが発覚し、それが原因でビザが却下される可能性もゼロではないです。
これからビザ延長を考えている方は、やはり正規の方法で働くほうが無難でしょう。
上記はあくまでも僕のこれまでの経験からの記事ですので、詳しくは必ずオーストラリアの税理士の方へ問い合わせをお願いします。